事業者には、使用する労働者の健康を確保するため、以下の一定の健康診断を行う義務があります。
また、労働者にも健康診断を受ける義務があります。
健康診断の対象となる労働者は正社員だけではなく、週30時間以上使用されるパート・アルバイトも対象になっています。
また、週20時間以上働く労働者に対しても健康診断を行うことが望ましいとされています。
1.雇い入れ時の健康診断
事業者は対象労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、医師による健康診断を行わなければなりません。
健康診断には検査項目が定められており、原則として、検査項目の省略は認められていません。
ただし、医師による健康診断を受けた後、3ヵ月を経過しない者を雇い入れる場合、その者が健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その項目についての健康診断を行わなくてもよいこととされています。
2.定期健康診断
事業者は、対象労働者に対して、1年以内ごとに1回、医師による定期健康診断を行わなければなりません。
これも検査項目が定められていますが、年齢など厚生労働大臣の定める基準に基づき、医師が必要でないと認める項目は、省略することができます。
3.特定業務従事者の健康診断
深夜業や坑内業務など、一定の有害な業務に従事する労働者に対しては、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回(胸部エックス線検査及びかくたん検査は、1年以内ごとに1回)、定期健康診断の検査項目について医師による健康診断を行わなければなりません。
健康診断の費用に関しては、事業者に義務が課されている以上、事業主が負担すべきものであると解されています。
賃金の支払いについては通達で、一般健康診断は業務遂行との関連において行われるものではないが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が払うことが望ましい、とされています。
つまり、労働者が健康診断を受けた場合は、所定労働時間かどうかに関わらず、その時間の賃金は払う方が望ましいとされています。
あくまで払うことが「望ましい」ですから、賃金支払いは義務ではありません。
ただし、特定業務従事者の健康診断は、業務との関連性を有しているため、所定労働時間内に行われるのが原則であり、当該健康診断が時間外に行われた場合には割増賃金を支払わなければならないと解されています。
その他のケースとして、労働者が事業者が指定した病院等での健康診断を希望せず、自分で健康診断を受診することは認められています。
その場合、労働者に診断結果を証明する書面を提出させれば問題はなく、健康診断を受ける時間を、労働時間とする必要もありません。
一番問題になるのが、労働者が会社の指示に従わずに健康診断を受けない場合です。
法律では、事業者が健康診断を実施しない場合、50万円以下の罰金が定められており、これを放っておくと会社が罰則の対象になってしまうのです。
(健康診断を受けない労働者に対しての罰則は定められていません。)
このようなケースを回避するためには、就業規則などの社内ルールで健康診断の受診義務や、健康診断を受けない労働者に対する処分を規程するようにしましょう。